老害×クロスレビュー老害たちによるボードゲームクロスレビューが連載開始!?ゲームモンスターたちが話題の2作品を独自の視点で語り尽くす。この人たち、やっぱどうかしてるって!

「いいゲーム」とか「面白かった」はもううんざり!
もっと濃いレビューが読みたい!

先日、久しぶりに再会した古参ゲーマーと話す機会に恵まれた。 まわりに最近老害呼ばわりされているんだと自笑を浮かべた彼は、こちらが聞いてもいないのに最近遊んだ新作ゲームについて、まくしたてるように語り始めた。
早口すぎてところどころ何を言ってるのかわからなかったが、知見に基づくピンポイントすぎる賞賛と、毒をたっぷり含ませた底意地の悪いジョークが、ない交ぜになったそれは、まさに批評と呼ぶにふさわしいものだった。
偏ったボードゲームの批評をもっと聞きたい。そう思い立ち、ウェブを見渡して見ても求めているものがなかなか見つからない。

じゃ、自分で作るかと、老害と呼ばれがちな人達にレビューをお願いして、クロスレビュー風にまとめてみることにした。
上がってきた原稿はどれも個性に溢れており、期待どおりの内容なのだが、みなさん書きたいことが多すぎて、ことごとく文字数がオーバーしてるって!
マニアから奇人まで、クセのある方々のゲームレビューをまとめて掲載する。前記の理由により人によっては長文すぎて読みにくい仕様となっておりますのでご了承を。でも、これこそが私が読みたかったレビューだ!


アズール

アズール

原題:Azul/ デザイナー:Michael Kiesling / メーカー:Plan B Games
発売年:2017年 / 価格 6000円
ゲームストア・バネストで日本語和訳付属版が発売中。

プレイ人数:2人~8人
プレイ時間:45分
対象年齢:8歳~

「ティカル」、「メキシカ」、「トーレス」などなど、ヴォルフガング・クラマーとの共作で名をはせたミヒャエル・キースリングの単独作品。王宮の壁にタイルを敷き詰めていくというテーマに沿った、美しいコンポーネントが特徴。シンプルながら、インタラクションによって1手がじわじわ重くなるゲームシステムが話題に。


北のかませ犬 鹿

アズールは〝美しさ〟が詰まったゲームだ。
まずひとつ目はコンポーネントの美しさ。タイル職人となり王宮の壁を作っていくゲームなのだが、そのタイルがとても美しい! 5種類あるタイルは発色、質感ともに本物のよう。ゲームが進むにつれて絵がはまっていく様子は胸が高鳴る。
ふたつ目はシステムの美しさ。いくつかの場に置かれたタイルの中から、ひとつを選択し一種類のタイルを取っていく、取らなかったタイルは中央へ捨てられて、そこもひとつの場としてタイルを取得することができる。そして取ったタイルは個人ボードの左側のマスに置き、その行がすべて埋まった時に初めて壁にタイルを嵌めることができる。置けなかったタイルはマイナスになってしまう。基本ルールはたったこれだけ。大変シンプルだ。

このゲームに必要な最も大切なのは「先読み力」。できれば無駄なくタイルを配置したい。だが余裕がなさすぎると、要らないタイルを大量にとらされてしまう。このゲームにパスはない! そこで相手の欲しいタイルを考慮して自分のアクションを選ばなければいけないのだが、ド素人タイル職人の私は、要らないタイルを7枚もつかまされ、大敗。熟練職人達には、わかるはず。これがどんなに酷いことなのかを・・・。2回目からは流石に要領を掴みウィンウィンを目指し、時に裏切りながら何とかトップに迫る健闘を見せることができた。運要素がとても少ないからこそ得点できた時の喜びは格別。そして、横一列にタイルが並べばゲーム終了という、タイル職人にあるまじき仕事の投げやりっぷりが生む収束性。どこまでも美しい。
ゲームは終盤になるにつれ、さもしい職人達による余りタイルのなすりつけあいが勃発し、その結果、美しさとはほど遠い、腹黒い輩が勝利する。職人の世界の厳しさよ。何度遊んでもトップになれなかった私の心は、まだまだ美しいのかもしれない。

アズール
北のかませ犬 鹿

プロフィール
札幌在住ボードゲーム歴2年目の新人。ポジティブゲーマー。好きなゲームは「ランカスター」「トラヤヌス」「ポンジスキーム」。

レビュアー紹介
ピュアなハートの道産子女子。老害たちを引き立てる〝かませ犬〟として無理を承知でレビューをオファー。で、まさかの快諾。なにかにつけて「いいゲーム」とか「面白い」とか書いちゃう、ありがちなレビューを期待していたのだが、どこかゆがんだ愛の溢れるテキストが届いたので最初の趣旨とは違うけど掲載。ゲーム歴2年目の何でもかんでも遊びたいざかり。

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捏造ボードゲーム考古学者 沢田大樹

まず目が行くのはPlan B Gamesというメーカー名で、これはAsmodeeに買収されたFilosofia Editionsの創業者含む残党が興したメーカーです。Filosofiaは問屋としてカナダで創業した後、2000年代後半に復刻版メーカーとしてのブランドを立ち上げる際、記念すべき大箱の一作目としてよりにもよってAleaのエクストリーム交渉ゲーム「チャイナタウン」を選んだという逸話を持つ、まあ完全に瞳孔のぱっかり開いてるメーカーでして、わたくし確か2008年にニュルンベルク・トイフェアに遊びに行った際、ここの営業の人がブースも取らんと「チャイナタウン」の巨大な箱を1個だけ抱えて東奔西走してるのを目撃したことがあります。あまりに感動したので名刺か何かもらったはず。彼の行く末の心配はとりあえず置いとくとしてここからわかるのは、この人達は流行をまったく気にしない、ということです。というわけで「アズール」に戻りますと、これはオールドスクールユーロどころの話ではなく、もし点数のカウントがスコアトラックじゃなくて金銭だったらそのままシド・サクソンの1967年作品「バザール」の横に置いてもまったく何の違和感もない、完全なる3Mスタイルです。教科書の1ページ目に出てくるキングメーカー投票ゲームに軽くスパイスを振っただけ、素材の味をそのままにご提供。そういえばPlan Bの第一作「センチュリー:スパイスロード」が正に「バザール」の影響下にあるシステムでしたっけね。プレイ後の感覚も、面白くてちょっと物足りない、3Mの中の上くらいのゲーム、あるいはシド・サクソンやアレックス・ランドルフの中の上くらいのゲームと言ってもいいかもしれませんが、あの感じです。いや上の下くらいはあるかな。コンポーネントにしたってアブストラクトに寄せて質感を良くして善男善女にアッピール、というブックシェルフ思想であって、いや良いんですけど、個人的には是非ともこの方針を貫いて欲しいんですけど、解せないのはこのゲーム、世評すっごく良いんですよね。あらゆる人々が心からこういうゲーム好きで愛してるってことなら大変結構なんですが、でもみんなこういうストレートなゲーム煙たがって決然とジャンク浴びるピープルになったんじゃなかった? 庭で取れたトウモロコシのおやつがうまいとか言ってるけど後ろ手にオニオンサワーパウダー味の缶入りポテトチップスとか隠してない? 本当に?

アズール
捏造ボードゲーム考古学者 沢田大樹

プロフィール
我ら99%、ただし残り1%の手先。共謀罪絡みの報道を聞きながら、どっか手頃な国の永住権が半額セールになってたりしないかな、と通販サイトを漁っております。
ここ1-2年では「ポンジスキーム」(2015)と「四人の容疑者」(2016)の印象が強く残ってます。もちろん「フードチェーンマグネイト」(2015)も好きですが、たぶん他の人のラヴ具合に追いつけてません。
近況:わーいシド・サクソンの「A Gamut of Games」翻訳出せたよー。「シド・サクソンのゲーム大全」読んでねー。

レビュアー紹介
「ゴーストップ」「スクエアオンセール」などのデザイナーでもあり、ニューゲームズオーダーの中の人として様々なゲームの日本語版制作を手がける。「重要タイトルで振り返る捏造ドイツボードゲーム20年史」はゲーマー必読の書。ドイツゲームに関する講演なども行っている。最近、東京ドイツゲーム賞で、「六次化農村」に独断で賞を与えて商品化したことでも話題に。日本ボードゲーム界の良心。

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高円寺のインコ/アーケイン子

おばさんになっても、かわいくないものよりかわいいものが好きである。
それが似合わなくても「かわいー!」と言うことで、永遠も半ばを過ぎた私の中の少女性を相手にチラ見せすることができるのだ。
ともあれ、アズールに出てくるタイルはかわいい。
ディアブロ3でもかわいいペットがいないわけではないが、ベクトルが違う。

アズールはタイルを揃えるゲームだ。
序盤に失点はほぼ無く、平和的にタイルを自ボードに配置することができる。
「あー、あのかわいいタイルほしい!」という女子力の芽生えが、徐々に失点につながってゆく。
ファクトリーから同色のタイルを取ると、残りは中央に捨てられてしまう。
この、捨てタイルから最初にゲットしたプレイヤーがスタピーを得る代わりに点を失うことになるのだ。
1列のタイルを揃えることは段々と難易度が高くなる。
ディアブロ3でいうところのセット装備だろうか。
セット装備を揃えると、強大な力を得る。
ディアブロ3では、エンシェントレジェンダリー、プライマルエンシェントのドロップのためにひたすらGRを掘りすすめる。
エンシェントアイテムは通常の装備品より基本性能が高い。
さらにプライマルエンシェントはGR70をクリアした者のみドロップする可能性があり、全ての性能が上限値となる非常に強力な装備品だ。
GR70を超え茶柱が立つと否応無しに期待するが、そう易々とドロップするものではないので、ただひたすらGRを周りながらプライマルエンシェントのセット装備で固める事を夢みている。

「アズール」でタイルをボードに印された条件通りに配置できると高得点につながる。
他のプレイヤーにとっては垂涎もののタイルを失点覚悟で取ってみたり、失点するしかない局面になることも終盤では珍しくない。

そんな時、つい他プレイヤーの顔を見る。
ディアブロ3では顔色を伺う相手はいない。
フォロワーのエンチャントレスが魔法をかけ間違えた話や、食べ過ぎたNPCの話を何度も聞くくらいだ。
リフトガーディアンを倒した後、レジェンダリージェムのアップグレードのためにウルシという精霊に話しかけるのだが、彼女も同じ事しか言わない。
ゲームでは良くある事だが、これもディアブロ3の様式美の1つと言えよう。
アズールはタイルを美しく配置することで、点数を得るので、似て非なるものとはいえ、どちらにも美の介在がある。

私は、ディアブロ3シーズン11で思いのほか、グローバルランキング上位に食い込んだ。
運と根気さえあれば誰でもできることを成し遂げた。
クローズ1週間前に離脱したが、ランキング は予想より遥かに落ちなかった。
これでやる気を失ってしまった。
新たなシーズンでは、前回と別クラスで挑んでいて、そのクラスもすばらしいのだが、私のピーク(と書いて奇跡)はやはりシーズン11なのだ。
過去に繁栄した美しき宮殿のタイルたちを眺めながら、過去の強運を栄光と勘違いしてしがみつく私は愚か者なのだと思う。
それを自覚しているだけで+1タイル、なんて御都合主義は通用しないのは当然だが、「アズール」は簡単なルールで深く楽しめるとても良いゲームだと思う。

アズール
高円寺のインコ/アーケイン子

プロフィール
会社員時代の部活でボードゲーム始めました。まだまだ初心者です。好きなゲームは「ディアブロ3」「Civlizavion」。マルチプレイなら「7 Days to Die」。最近やって面白かったボードゲームは「フルーツジュース」。

レビュアー紹介
ゲームと現実の区別が曖昧なデジタルゲームやり過ぎ女子。「ディアブロ3」では世界ランキング27位に入ったこともあるつわものゲーマー。満員電車で「ネクロマンサーの友人が~」等、強烈なパワーワードを大声で連呼する姿に衝撃を受け、執筆を依頼。なんでもかんでもデジタルゲームに例えてしまうところを除けば良識人。

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マスクドSG

'17エッセンシュピールの新作タイルゲーム。
ラーメンどんぶりの模様をお洒落にしたみたいな柄が描かれた丸い厚紙タイルの上にカラフルで四角いタブレットガムみたいなプラスチックタイルをばらまいて、よーいドン!
わあ! アラフォーおじさんはお洒落の過剰摂取で死んじゃいます!!! でも待てよ、あれ? この見た目、何かに似てる。ああそうだ!「缶詰本舗のチャイニーズレストラン」だ! ちなみにこちらも'17秋ゲームマーケット頒布のピカピカの新作でございます。
チャイニーズレストランの丸い厚紙タイルはラーメンどんぶりというか中華料理の皿そのものを表しており、その上に"辛味"、"酸味"などの味チップを置いていく。おお! ここまではまるで双子のようにそっくりではありませんか。でも不思議。こちらはとてもアラフォーに優しい。溢れる昭和テイストがとても落ち着きます。
しかしチャイニーズレストランはここから更に盛ってきます。なんとその皿タイルを乗せる台として中華料理屋によくある回転テーブルのミニチュアが同梱されているのです。もちろん実際に回転します。
この台があることでテーマの再現性と、目の前にきた皿から味チップを1枚取って残りをとなりにまわすドラフト動作を簡単にするという一石二鳥のアイデアが素晴らしい!
ゲームシステムとしてはアズールがお洒落な見た目なのに地獄のようなジレンマでギスギスしたプレイ感というギャップ萌えキャラなのに対し、チャイニーズレストランはオールドスタイルな見た目だけど、わたし、脱いだら凄いんです! ゴージャスボディの上に協力ゲームなのでキャッキャしながら楽しめる地味系ヒロイン枠という感じ。
あれですね、漫画でいうと「みゆき」的なやつです。え?違う。みゆき違う? じゃあ「冬物語」で。

アズール
マスクドSG

プロフィール
謎の国産同人仮面。袋ゲーを詰め込んだパンドラの箱が増えすぎて、押し入れという名の天岩戸から溢れ出そうとしている。その瘴気に当てられたのか、はたまた脳の経年劣化なのか、最近は特殊能力などの把握が覚束なくなり、ますますエンジョイ勢に近づきつつある日々。インスト5分以内のゲームをお待ちしております。
好きな漫画家は笠辺哲。自らの欲望に正直なキャラしか出てこない独自の笠辺ワールドは唯一無二の魅力。この世界の住人みたいになるのが人生の目標っす。

レビュアー紹介
ゴミの中に宝がある! の勝新イズムで同人ゲームと呼ばれるものならなんでもかんでも遊んでみる性分。遊ぶ気がまったくおきないプロト版から「惨劇ルーパー」を発掘するなど目利きとしての功績は大きいはず、なのだが、同人ゲームファンやデザイナーから軒並み距離を置かれているのは驚異的な人徳のなさと、ブローカー気質が原因か。ゲームは粗ければ粗いほどいいが信条。