「いいゲーム」とか「面白かった」はもううんざり!
もっと濃いレビューが読みたい!
先日、久しぶりに再会した古参ゲーマーと話す機会に恵まれた。
まわりに最近老害呼ばわりされているんだと自笑を浮かべた彼は、こちらが聞いてもいないのに最近遊んだ新作ゲームについて、まくしたてるように語り始めた。
早口すぎてところどころ何を言ってるのかわからなかったが、知見に基づくピンポイントすぎる賞賛と、毒をたっぷり含ませた底意地の悪いジョークが、ない交ぜになったそれは、まさに批評と呼ぶにふさわしいものだった。
偏ったボードゲームの批評をもっと聞きたい。そう思い立ち、ウェブを見渡して見ても求めているものがなかなか見つからない。
じゃ、自分で作るかと、老害と呼ばれがちな人達にレビューをお願いして、クロスレビュー風にまとめてみることにした。
上がってきた原稿はどれも個性に溢れており、期待どおりの内容なのだが、みなさん書きたいことが多すぎて、ことごとく文字数がオーバーしてるって!
マニアから奇人まで、クセのある方々のゲームレビューをまとめて掲載する。前記の理由により人によっては長文すぎて読みにくい仕様となっておりますのでご了承を。でも、これこそが私が読みたかったレビューだ!
サンタマリア
原題:Santa Maria / デザイナー:Eilif Svensson, Kristian Amundsen Ostby / メーカー:Aporta Games
発売年:2017年 / 価格 7,236円
テンデイズゲームズから日本語訳付属版が発売中。
プレイ人数:2人~4人
プレイ時間:45分~90分
対象年齢:12歳~
「エスケープ」「4人の容疑者」を手がけたノルウェー出身のデザイナー、クリスチャン・アムンセン・オストビーによるリソースマネジメントゲーム。パズルライクに配置したタイル上の建物を、ダイスを使って列や段単位で可動させていくシステムが特徴。個別ボードやパラメーターの散らし具合など流行をとらえた作りのなかに、鬼才ならではの手腕が光る。
「開拓」その言葉は北の大地に住む私の心に深く響く。サンタマリアは入植地を発展させ、宗教的影響力を増やし最も幸福度を上げたプレイヤーが勝利となるゲーム。勝利点ではなく、幸福度。満面の笑顔が描かれた幸福度トークンに若干の狂気を感じるのは私だけではあるまい。
このゲームは個人ボードの植民地を発展させアクションを増やしていくのだが、その起動の仕方が面白い。各プレイヤー専用の青ダイス(個人ボードの対応する目の横一行を全て発動)とプレイヤーが早い者勝ちで取れる白ダイス(対応する目の縦一列を全て発動)があり、最初はボードのアクション数も乏しく、ピンポイントで行えるアクションの方が効率的だったのが、タイルを配置して自らの領地が発展していくにつれて、一斉起動が俄然効果を発揮していく。ちなみに青ダイスは信仰トラックを進めることで増やすことができる。信仰を深めるとダイスが降ってくるとは、なかなか興味深い宗教だ。
もうひとつのポイントは出荷タイルの購入だろう。「少年よ大志を抱け」とは道産子にはなじみ深いクラーク博士の言葉だが、狭い植民地にとどまらず航海を行うことでラウンドの最後に手番をパスした時、個人ボードの船着き場にある出荷タイルの枚数分、追加でボーナスが入る。最後の最後に一気に巻き返すことができるのだ。
個人ボードでのアクションがメインのため、そこまで他人に邪魔されないところが良いところでもあり、悪いところでもある。タイルのイラストが細かく、相手の個人ボードもあまり見えないため、狙っているタイルがなんなのか分からない。さらに出荷タイルの獲得に必要な資源と点数が完全にランダムなため、資源を貯めていざ買おうとしたところで横から掻っ攫われてしまう運要素の部分も大きい。この運と実力の加減がとっつきやすさを生んでいるのはたしかだが、私のような戦意の高めの人間からすれば、この相互作用のなさは、ちょっと寂しさすら感じる。だが、繰り返し遊んでみたくなる、ただのタイル配置ゲーム以上の面白さがあるのも確かだ。
札幌在住ボードゲーム歴2年目の新人。ポジティブゲーマー。好きなゲームは「ランカスター」「トラヤヌス」「ポンジスキーム」。
ピュアなハートの道産子女子。老害たちを引き立てる〝かませ犬〟として無理を承知でレビューをオファー。で、まさかの快諾。なにかにつけて「いいゲーム」とか「面白い」とか書いちゃう、ありがちなレビューを期待していたのだが、どこかゆがんだ愛の溢れるテキストが届いたので最初の趣旨とは違うけど掲載。ゲーム歴2年目の何でもかんでも遊びたいざかり。
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↑↑↑こんにちは↑↑↑
Kristian Amundsen Østbyは2010年代のユーロゲーム分野における最も重要な作者です。代表作「Escape」は協力ゲームというジャンル自体をネクストレベルに押し上げた作品ですし、「4人の容疑者」では一つの嘘を持ち込むことで例の手垢のついた推理物にまるで異なるプレイをもたらしており、一方「Auto mania」ではワーカープレイスメントを適量のインタラクションと共に綺麗に仕上げることも難なくやっています。特に「サンタマリア」の事実上の前作と言って良いであろう、Eilif Sevenssonとの共作「Doodle City」(2014)は、単に共通ダイスの出目でマークシートに各自チェックを入れていくだけのビンゴゲームでありながら、他者の動向を常にチェックしつつ一手先を取ることをプレイヤーに要求して駆け引きの妙を実装するという離れ業を実現しています。これは本当に高度な達成なんですけれども、当時の反応といったら黙殺も良いところで、と原稿用にBoardGameGeekでファクトを再確認してたらうっかりレーティングが目に入ってしまって憤りがぶり返したところで「サンタマリア」です。さっき言った通り、縦列用のダイス目と横列用のダイス目で手元の箱庭のうち弄れる場所が決まる、という基本設計を共通に持つ、「Doodle City」の拡大後継作です。ただし、ここでいう「拡大」というのは、「複雑にすることで丸くした」という意味です。最終的に点数に繋がる諸々の要素をどのようにコントロールしていくか、という手元のマネジメントの要素が大幅に足し込まれ、そのぶんだけ他者の状況の重要性は(それ自体が薄くなったという訳では無いものの)後景に退いています。結果としてここに存在するのは、いろいろとある要素で特定の他者をなるべく独走させないようにしつつ自分は如何に乱数を乗りこなしていくか、という遊びであって、これは乱数の部分に強い主張がありつつも、比較的ウェルメイドなユーロ好事家向けジャンルゲームの枠内に収まる物です。Østbyが作者に名を連ねている以上はウェルメイドは文字通り良くできていることを意味するもので、いったい何が不満なのかという話ではあるんですけれども。ルールの単純はプレイの単純を必ずしも保証せず、なによりも鑑賞の単純を全く保証しない、むしろルールの簡単さに足を取られて簡単に見誤るようにできている、そしてそれゆえの達成があったDoodle Cityを比較対象に見てしまうとどうしても、貴方が面白いゲームを作れるなんてことはこういうのをわざわざ遊ぶゲーマーなら皆知ってるんだよ、という気分になってしまうんですね。いや、本当にもっと憂鬱を感じるのは、「ゲーマーなら皆知ってる」なんてことは実際には全くないんだ、という事実に対してなのかもしれませんが。あのBGGの(以下サイトの品位のために省略させていただきます)。
我ら99%、ただし残り1%の手先。共謀罪絡みの報道を聞きながら、どっか手頃な国の永住権が半額セールになってたりしないかな、と通販サイトを漁っております。
ここ1-2年では「ポンジスキーム」(2015)と「四人の容疑者」(2016)の印象が強く残ってます。もちろん「フードチェーンマグネイト」(2015)も好きですが、たぶん他の人のラヴ具合に追いつけてません。
近況:わーいシド・サクソンの「A Gamut of Games」翻訳出せたよー。「シド・サクソンのゲーム大全」読んでねー。
「ゴーストップ」「スクエアオンセール」などのデザイナーでもあり、ニューゲームズオーダーの中の人として様々なゲームの日本語版制作を手がける。「重要タイトルで振り返る捏造ドイツボードゲーム20年史」はゲーマー必読の書。ドイツゲームに関する講演なども行っている。最近、東京ドイツゲーム賞で、「六次化農村」に独断で賞を与えて商品化したことでも話題に。日本ボードゲーム界の良心。
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「サンタマリア」は非常によくできた楽しいゲームだ。
まず自分のサイコロ(青)と、共有のサイコロ(白)を振る。
このときの出目がプレイヤーの行動を豊かにしたり、反対にしょんぼりとした気持ちにもさせるが、お金での解決策が用意されているのでそこまでサイコロの出目に縛られ過ぎないのがまたうまくできていると思う。
自国の資源を増やし、最大限に活用することにより、国民に笑顔が生まれる。
この幸福度が点数に直結するので、いかにして幸せになるか、を常に考えなければならない。
ディアブロ3ではカナイのキューブを使うことで、宝石の種類を変えることができる。始めたばかりの頃はそんなにお世話にならなかった機能だが、これが結果的にステータスに直接関わる効果を手っ取り早く得る方法でもあり、ステータス強化こそ、私の幸せである。
HCモードの高レベルGRは常に死と隣り合わせ、必然的に手汗がじんわりと滲み出てくる。
一度の死でキャラロストするので、おいそれと死ぬわけにはいかないのだ。
コントローラーを握る手に力がはいる。
結果、私は特定の筋肉を何度も何度も痛めることになるのだ。
ディアブロ3によって痛める筋肉の呼び名を真剣に考えてみたのだが、どうにもしっくりくる答えに至らなかった。
「サンタマリア」で目当てのタイルをゲットできるかは、若干の運要素をはらんでいる。
そして生産が有利になるように配置を考え組み立てて行く様は、ディアブロ3で言うところのビルドであろう。
どうでもいいけど、わたしはウルザエルが苦手で、ウルザエル戦かマルサエル戦を選ぶなら、マルサエルに挑みたい。
重火器を振り回すウルザエルの攻撃は素早くはないので、炎に焼かれ滅する事こそ避けられるが、彼は時々跳ぶのだ。私は油断と慢心があだとなり、彼に潰され死んだ事がトラウマになっている。
対してマルサエルは素早く強い攻撃を繰り出すが、ラスボスという意識から一切の油断もしない。結果、私はマルサエル戦でうっかり死ぬ事がないのである。
最近は、若干のディアブロ3離れをしており、筋肉を痛めないゲームを楽しんでいる。
コントローラーを握った時に、痛みを感じない指にホッとする気持ちと、痛めつけなくていいのか、という気持ちの中で揺れている。
そういった観点から見ると、ほとんどのアナログゲームは筋肉にとても優しい。
気持ちの整理がつく前にもう一度、「サンタマリア」で遊びたい。
二度のプレイで、まだやり残したことがあるのだ。
※追記 このあともう一度遊んだ結果、個人ボードをB面で遊ぶと特殊効果が発動されるため、新たなコンボと考えどころが生まれ断然面白いことが判明。そこを加味すればプラス3点ってとこでしょうか。
会社員時代の部活でボードゲーム始めました。まだまだ初心者です。好きなゲームは「ディアブロ3」「Civlizavion」。マルチプレイなら「7 Days to Die」。最近やって面白かったボードゲームは「フルーツジュース」。
ゲームと現実の区別が曖昧なデジタルゲームやり過ぎ女子。「ディアブロ3」では世界ランキング27位に入ったこともあるつわものゲーマー。満員電車で「ネクロマンサーの友人が~」等、強烈なパワーワードを大声で連呼する姿に衝撃を受け、執筆を依頼。なんでもかんでもデジタルゲームに例えてしまうところを除けば良識人。
↓↓↓いつか広告収入だけで宮殿を建てたい↓↓↓
↑↑↑できればずっとボードゲームをしていたい↑↑↑
'17エッセンシュピールの新作ダイスプレイスメント。6×6グリッド状のマップの各列にダイス目を対応させ、使うダイスの目の列ごとのアクションを行うというシステムが特徴だ。
そのシステムにとても近い国産ゲームが先頃行われた'17秋ゲームマーケットで頒布されていたのを賢明かつ聡明な読者の皆様は気付いているだろう。そう、あの傑作・サクサク三国志を産み出したサークル、植民地戦争+αさんの「神倭のくに」である。
6×6ではないがグリッド状のマップの列にダイス目が対応しており、使うダイス目によって発動するアクションがある程度制限されている。
このようなアイデアが海を隔てた遠い地でほぼ同時期に発表されたことはシンクロニシティの妙を感じざるを得ないが、実は「神倭のくに」の方には完成の元になったと思われる1つのゲームがあった事を覚えている方はいらっしゃるだろうか。
そのゲームは'14秋ゲームマーケットで植民地戦争+αさんが頒布された「村転がし」である。システムはまだダイスプレイスメントという形ではなかったが、3年前、既に"ダイス目に対応したグリッドマップ"というアイデアの種は日本で芽吹いていたのだ。
その芽がどのような経緯で海を渡り、遠い地で大輪の花を咲かせたのかは定かではないが、私はこの「サンタマリア」をプレイしながらその3年間の冒険を想像し、幸福トークンとそっくりの笑顔を浮かべながら、おかえりなさいと呟いたのだった。
謎の国産同人仮面。袋ゲーを詰め込んだパンドラの箱が増えすぎて、押し入れという名の天岩戸から溢れ出そうとしている。その瘴気に当てられたのか、はたまた脳の経年劣化なのか、最近は特殊能力などの把握が覚束なくなり、ますますエンジョイ勢に近づきつつある日々。インスト5分以内のゲームをお待ちしております。
好きな漫画家は笠辺哲。自らの欲望に正直なキャラしか出てこない独自の笠辺ワールドは唯一無二の魅力。この世界の住人みたいになるのが人生の目標っす。
ゴミの中に宝がある! の勝新イズムで同人ゲームと呼ばれるものならなんでもかんでも遊んでみる性分。遊ぶ気がまったくおきないプロト版から「惨劇ルーパー」を発掘するなど目利きとしての功績は大きいはず、なのだが、同人ゲームファンやデザイナーから軒並み距離を置かれているのは驚異的な人徳のなさと、ブローカー気質が原因か。ゲームは粗ければ粗いほどいいが信条。