老害×クロスレビューイカれたゲームモンスターたちがゲームの感想をひたすら綴るボードゲームレビュー。第4回は今年のドイツ年間ゲーム大賞にノミネートされた2作をレビューしてるんですが、ザ・マインドのレビューに関しては、例の説明書の逆さの文章をチェックした人だけ読んでもOK。遊んだことない人や、逆さの文章なにそれ? という人には結構なネタバレがあるので注意。クリアするぐらい遊び倒したあと最後に読んで!

「いいゲーム」とか「面白かった」はもううんざり!
もっと濃いレビューが読みたい!

先日、久しぶりに再会した古参ゲーマーと話す機会に恵まれた。 まわりに最近老害呼ばわりされているんだと自笑を浮かべた彼は、こちらが聞いてもいないのに最近遊んだ新作ゲームについて、まくしたてるように語り始めた。
早口すぎてところどころ何を言ってるのかわからなかったが、知見に基づくピンポイントすぎる賞賛と、毒をたっぷり含ませた底意地の悪いジョークが、ない交ぜになったそれは、まさに批評と呼ぶにふさわしいものだった。
偏ったボードゲームの批評をもっと聞きたい。そう思い立ち、ウェブを見渡して見ても求めているものがなかなか見つからない。

じゃ、自分で作るかと、老害と呼ばれがちな人達にレビューをお願いして、クロスレビュー風にまとめてみることにした。
上がってきた原稿はどれも個性に溢れており、期待どおりの内容なのだが、みなさん書きたいことが多すぎて、ことごとく文字数がオーバーしてるって!
マニアから奇人まで、クセのある方々のゲームレビューをまとめて掲載する。前記の理由により人によっては長文すぎて読みにくい仕様となっておりますのでご了承を。でも、これこそが私が読みたかったレビューだ!


ザ・マインド

ザ・マインド

原題:The Mind / デザイナー:Wolfgang Warsch / メーカー:日本語版 アークライトゲームズ、NSV(Nurnberger-Spielkarten-Verlag)
発売年:2018年 / 価格 1944円

プレイ人数:2人~4人
プレイ時間:20分(1ゲーム)
対象年齢:8歳~

本作を含め、ドイツ年間ゲーム大賞2018のノミネート6作品中、3作品に携わっているデザイナー・ヴォルフガング・ウォルーシュが手がけた今年いちばんの話題作。
※【注意】レビューにはある意味ネタバレが含まれているので、遊んだことがない人はもちろん、遊んだことがあっても、ゲームの説明書を最後まで読んでいない人は読まないで


北のかませ犬 鹿

ザ・マインドは非常にシンプルなゲームだ。配られた手札を全員で協力して小さい数から大きい数へと順番に場に出していく。基本ルールはただこれだけ。そして、このゲームの最も大きな特徴が「決して話してはいけない」ということである。

「会話」というコミュニケーションにおいて最も重要な要素を封じられたとき、私たちは互いの顔を見つめ、その一挙手一投足から情報を得ようとする。

 もちろん、最初からはうまくいかない。道半ばで失敗を重ねゲームオーバーを迎えてしまうだろう。だが、その失敗にも意味はある。会話という重要な情報ツールを封じられてしまっているが故、間違ってしまうのは当たり前。だからこそ協力ゲームで空気が重くなりがちな痛恨のミスの瞬間に「これはしょうがない」「惜しかったよ」と自然と慰めあえるのだ。

逆に成功したときの喜びはひとしお。その瞬間、私たちはお互いをたたえ合い、理解しあたような気分になり、なににも代えがたい喜びを爆発させる。こんなにハイタッチをするゲームはあんまりない。

このゲームにはひとつの解が存在する。それは「時間」を共有することである。プレイヤー間の時間感覚を共有することで、ゲームクリアに近づくことができる。「集中」をスタートとして各プレイヤーが心の中で1から数を数え、持ってるカードの数を数えたタイミングで出す。

ただ、私はこの方法があまり好きではない。顔を見合わせながら心の中で不確かなサインを送ったり感じたりしながらカードを出す。そのドキドキがたまらなく好きなのだ。
非常に単純なルールだからこそ面と向かって人と遊ぶことの楽しさをダイレクトに感じることができるゲームだ。

ザ・マインド
北のかませ犬 鹿

プロフィール
札幌在住ボードゲーム歴2年目の新人。ポジティブゲーマー。好きなゲームは「ランカスター」「トラヤヌス」「ポンジスキーム」。

レビュアー紹介
ピュアなハートの道産子女子。老害たちを引き立てる〝かませ犬〟として無理を承知でレビューをオファー。で、まさかの快諾。なにかにつけて「いいゲーム」とか「面白い」とか書いちゃう、ありがちなレビューを期待していたのだが、どこかゆがんだ愛の溢れるテキストが届いたので最初の趣旨とは違うけど掲載。ゲーム歴2年目の何でもかんでも遊びたいざかり。

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捏造ボードゲーム考古学者 沢田大樹

クラシカルな協力ゲームの何が問題だったかを振り返ってみましょう。「パンデミック」(2008年)が典型ですが、複数の意思決定主体を必要とする構造になってないので、これを意思決定の遊びとして捉えると変な縛りのある1人ゲームでしかない、ということです。

この問題を解決するには充分な量のディスコミュニケーションが必要になり、それではというので提出されたひとつの模範解答が「スペースアラート」(2008年)や「エスケープ」(2012年)に代表される時間制限です。全員協力ゲームが1人ゲームになってしまうのは、ルールによってコミュニケーションの制限や禁止を設けてもそれを強制する力となる審判や敵方が存在しないので結局ずるずるとコミュニケーションを始めてしまうからなのですが、タイマーは審判や敵方に匹敵するほど強く明快な制約なのでディスコミュニケーターとして機能します。時間という極めて強い制約の中で如何にして必要充分なコミュニケーションを確保するかというチームのスキルに関するゲームになるわけです。

一方、同時期に提出された解答例の中には、全く模範的ではなくしかしこれはこれで確かに機能する別解がありました。2010年発表のSdJ受賞作「花火」です。「花火」が取ったアプローチは前述の「機能する強く明快なディスコミュニケーター」とは全く逆で、全てを矛盾のままにプレイヤー達に投げ出す、というものでした。「花火」では『一切のコミュニケーション』がルールで禁じられています。じっさい仮にコミュニケーションを無制限に有りとするとゲームとして必要な障害が全く存在しなくなり、つまりゲームとして成立しなくなるのですが、一方でルールを厳密に守った場合、今度は障害を越えるための手立てが全く無くなるので、これはこれでゲームとして成立しません。「花火」のセッションにおいて行われるのは、どれくらいのコミュニケーションであればゲームとして成立するのか、その共通認識をプレイヤー間で探っていく、というもので、ええと、これはゲームなのか? …というかメカニクス自体は狭義のゲームとは明らかに言えないんですけど、でもだからこそスリリングで面白い遊びになるんですよね。

このルールとプレイの関係を問う遊び「花火」は、マイルドかつフレンドリーに形を変えて、2015年の「ザ・ゲーム」で再演されることになります。コミュニケーションが成立する境界線についての共通認識に関する遊び、という意味ではほとんど「花火」と一緒ですが、「花火」は一切のコミュニケーションを禁ずる所からスタートしているのに対し、「ザ・ゲーム」は共通認識が致命的に成立してしまう一線を超えない限りにおいてコミュニケーションが認められています。「花火」のほうが本質的な部分をより強く突いていますが、もちろん楽しく朗らかに遊べるのは始終賑やかな会話が場に広がる「ザ・ゲーム」のほうです。

以上が「ザ・マインド」(2018年)の背景です。「ザ・ゲーム」と同じメーカー、おそらくは同じデベロップ体制で世に出された「ザ・マインド」は、数字カードをルールに沿って出せるかどうかを試されるという外形も、共通認識に関する協力ゲームであるという構造も、はっきりと「ザ・ゲーム」に連なるものとして作られていますが、しかし一点、極めて大きな違いがあります。

「花火」が狭義のゲームではまったく無く、マイルドになっているとはいえ「ザ・ゲーム」もあまり狭義のゲームではないのに対して、「ザ・マインド」はまごうことなく狭義のゲームだ、ということです。最初に「スペースアラート」や「エスケープ」のことを『極めて強い制約の中で如何にして必要充分なコミュニケーションを確保するかというチームのスキルに関するゲーム』であり、協力ゲーム問題に対する模範解答だと書きましたが、この記述は「ザ・マインド」にもそのまま適用できます。「ザ・マインド」には、「花火」と大差ないじゃないかというくらい厳格なコミュニケーション制限があるんですが、しかしこの制限は、遵守されているか違反があったかの線引きが容易であるという点で「機能する強く明快なディスコミュニケーター」であり、かつ、その厳格な制限にもかかわらず、ここから全員の共通認識を築き上げることは(説明書の最後に書いてある通り)巧くやれば可能です。ルールを破ることによってのみ手に入るものだった共通認識が、ここではスキルの構築によって手に入れるべきものに転換されているわけです。

「ザ・マインド」は、協力ゲーム問題に対する2種類目の、それもオリジナリティの高い模範解答を提出できたゲームであり、その点で意義を高く評価されるべき作品だと言えるでしょう。…会話も目配せも一切許されず(「花火」みたいな)エクスキューズも効かないゲームを楽しむのって随分ハードル高くないすか、というのは別の問題として。

ザ・マインド
捏造ボードゲーム考古学者 沢田大樹

プロフィール
我ら99%、ただし残り1%の手先。共謀罪絡みの報道を聞きながら、どっか手頃な国の永住権が半額セールになってたりしないかな、と通販サイトを漁っております。
ここ1-2年では「ポンジスキーム」(2015)と「四人の容疑者」(2016)の印象が強く残ってます。もちろん「フードチェーンマグネイト」(2015)も好きですが、たぶん他の人のラヴ具合に追いつけてません。

レビュアー紹介
「ゴーストップ」「スクエアオンセール」などのデザイナーでもあり、ニューゲームズオーダーの中の人として様々なゲームの日本語版制作を手がける。「重要タイトルで振り返る捏造ドイツボードゲーム20年史」はゲーマー必読の書。ドイツゲームに関する講演なども行っている。最近、東京ドイツゲーム賞で、「六次化農村」に独断で賞を与えて商品化したことでも話題に。日本ボードゲーム界の良心。翻訳を担当したディストピアSF-RPGの第3ルールブック『パラノイア【ハイプログラマーズ】』が発売中。

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浪速のリア充モンスター/ヨシダ

「Never Mind..」というとツリーフロッグな方にはSex Pistolsの1stアルバムな訳ですが、残暑厳しい英国の夏、ワレサーの皆様いかがお過ごしでしょうか。
そんな夏の象徴Pistolsの代名詞というとご存知シド・ヴィシャスですよね。「シド&ナンシー」という映画にもなりました。そんな彼、あまり知られていませんが実はオリジナルメンバーではありません。
最初のベース担当はグレン・マトロックというメンバーだったのですが、あるきっかけで彼がBeatlesの大ファンであることが露呈してしまいます。そして「そんな軟弱者はクビだ!」と、このアルバムのレコーディング直前に脱退させられることになりました。そして、当時親衛隊の一人だった楽器も弾けないシドが加入したというエピソードが残っています。冒頭が長くなりました。「暮しとロッキンオン」、今回のレビューは「The Mind」です。

ルールとしては非常にシンプルです。1-100の数字が書かれたカードをラウンド数と同じ枚数各自が手札に持ち、特に手番もなく中央の場に昇順にカードを出していきます。
失敗すればライフを失い、すべて出し切ればラウンドクリア。そして規定ラウンドをクリアすればゲームに勝利といった協力ゲームになります。プレイをサポートする手裏剣アクションもありますが基本はほぼこれだけ。ただこのゲームを特徴付ける重要なルールとしてプレイ前に行う「集中フェイズ」なるものがあります。なおゲームの途中で「集中し直す」ことも可能です。

では具体的に「集中」とは一体何をするのか?プレーヤーは全員目を閉じ、手のひらをテーブルに置き、心を研ぎ澄まし、ただ「集中」するのです。各プレーヤーが互いに集中し合うことで得られるもの、それが「同調」です。空気を読むのではなく、皆で同じ空間と時空の流れを「つくりだす」のです。そんなジャンルがあるかどうか分かりませんが、称するなら「スピリチュアルゲーム」あるいは「力の漲るパワーストーン系ゲーム」に分類されるでしょうか。「ポチったら彼女が出来ました」的なアレです。

先日幸運にも遊ぶ機会を得ました。残念ながら彼女は出来ませんでしたが、先の「空気を同調させる」感覚が新鮮でプレイ後にはメンバー達と少し分かり合えた気がしました。適度な戦略もあり緩やかではあるものの心地良いラーニングカーブも描ける次世代の作品、個人的にはそんな評価でした。巷では「これは果たしてゲームなのか」という批判めいた意見も少なくありません。ただ固定概念打ち破るエポックメイクな作品が現れるときは得てしてこんなものなのかもしれません。

本作から得られる新しい体験と浴びせられる懐疑的な言葉の数々は「これは音楽ではない」と社会から批判されながらその革新性と自由な思想で聴く者の「Mind」を震わせ70年代英国パンク史に名を残したPistolsの1stアルバムの姿とシンクロするのです。「The Mind」、2010年代ユーロ史を彩るスピリチュアルタイトルとして世に残る名盤ではないでしょうか。
なお「Never Mind」といえばニルヴァーナだろう、というアメリトラッシュな方には「Shifty Eyed Spies」というタイトルがお勧めです。ただかなり人を選ぶゲームではありますのでお気に召さなくても You Never Mind!

ザ・マインド
浪速のリア充モンスター/ヨシダ

プロフィール
大阪在住。でも心は琵琶湖。独身時代に収集した千枚以上のレコードやCDは結婚資金に消え、貯蓄していた老後の蓄えはボードゲームに姿を変えました。好きなジャンルは拡大再生産と'60,'70年代英国Mods。好きなアーティストはフヴァティルとThe JAM。近頃はトリックテイクに興味津々。

レビュアー紹介
ウッドベースのしらべと共に奴が来る! スーツスタイルでバンド活動とか、美女をはべらせてアウトドアとか、夢のような遊びと平行してゲームをたしなむリア充ゲーマー。ビルボードチャートやブランド牛の焼き加減と、エッセンのスカウトアクションが並列する脳内から発する考察が的を射てるのか否かは、鼻クソを食べながら公民館でゲームばっかやってる我々には判断不可能! でもたぶん間違ってる気がします。ていうか、頼むから間違っててくれ!

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ギークな住職 小野卓也

昨今新作リリースが多すぎて、どんなゲーマーズゲームも2,3度遊べばいいほうという方が多い中、むしろ繰り返し遊んだほうがいいゲームに出会った。ルールは単純だし、カードをプレイするタイミングを無言の中ではかっていくということもすぐに分かるが、1,2回ではあまり面白さが分からない。しゃべれないし、沈黙は長いし、だいたいどこでカードを出したらいいか分からない。だから「人を選ぶゲーム」という評価も出てくる。
この作品の仮題は「カンフー・マインド・ニンジャ(Kung-Fu Mind Ninjas)」だったという。忍者たちが道場で静かに精神修養をしているという設定だ(そのため製品版にも手裏剣カードが入っている)。このゲームで観察するべきものはカードではなく、一緒にプレイしている人の心、そしてその心を読むための微妙な表情や手の動きである。真剣白刃取りのような研ぎ澄まされた緊張感が、このゲームの醍醐味となる。
近年、「マインドフルネス」という瞑想が日本でも脚光を浴びているが、この瞑想でマインドを集中して観察するのは自己である。しかしこのゲームでは自己を開放し、他者と一体化した「我々」を観察することになる。日常ではなかなかできない経験ではないだろうか。
ゲームが始まる。「集中!」ここからタイミングの読み合いが始まる。「手札を下げたからしばらく出す気はなさそうだ」とか、「周りを見回しているからもう少しで出そうだ」といったところから始まって、次第に言葉では説明できない感覚の世界へ。1番違いのカードをポンポーンと出せたとき、それが限りなく偶然ではないことを皆は知っている。「我々は、誰がどの順番で出せばいいのか、予め知っていたのだ」とでも言わんばかりに。もっとも、このように全員のマインドがシンクロする境地にたどり着くには、メンバーの集中力が高く保たれていなければならないし、集中力が高くてもそれを揃えるまで何ゲームもかかるだろう。1ゲームは15分もかからないので、続けて遊ぶべきである。皆で育てた感覚は、少し間が空いただけでも簡単にずれてしまうからだ。
続けて遊んだ後には、数々の奇跡を成し遂げた満足感と、長時間ゲームをたっぷり遊んだような充実感が待っている。息をするのも忘れるほど、すべて夢中なひとときである。

ザ・マインド
ギークな住職 小野卓也

プロフィール
ボードゲーム情報サイトTable Games in the World管理人。テレビ東京『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!』の「我が家の困ったコレクター」にVTRで出演。秘蔵のアダルトボードゲームコレクションが白日のもとに晒され、清水ミチコさんに「煩悩だらけじゃねーか」と突っ込まれた。

レビュアー紹介
ボードゲームジャーナリスト兼住職。「ノンリプレイ派」として遊び倒した経験に基づく知識と、議論術や論理学をベースに徹底分析した解説は理路整然。国際ゲーム賞International Gamers Awardsでアジア人初の審査員としても活躍。業界で問題が発生するとなぜか責任を押しつけられて炎上する人としても有名。


マスクドSG

私の中のゲーム評価基準のひとつに「コロンブスの卵ゲーム」というのがある。いや、実際、世間一般にはないのだが、あくまで私の脳内にだけある。
ルールを聞くとあまりにシンプルで誰でも考え付きそうなのに、同じようなものは今までなかった。なんで自分が考え付かなかったんだ! と叫びたくなるような、称賛と悔しさと羨ましさと切なさと心強さで地団駄を踏んでしまう、そんなゲームを言い表す時に使っている私的評価枠である。

具体的には、ひとつ前のフルーツジュースのクロスレビューで紹介した『メイクルール』(YbYゲームズ)や、最近のものだとゲームマーケット2018春に発表→即オインクゲームズにピックアップされ商業作品になった『トマトマト』(BGLAB)がこの枠である。
その他にも、歌詞カルタ『狩歌』(Xaquinel)、みかん神経衰弱『あるみ缶』(缶詰本舗)、透明カード『ピクテル』(ボドゲイム)、三色オセロ『トリコロール』(JOY)、表情カルタ『フェイスアクター』(チームきりたんぽ(仮))、などが私の中の「コロンブスの卵ゲーム」のノミネート作品だ。

国産同人ゲームは毎年ものすごい量が発表されるが、その中でもこの「コロンブスの卵」的なゲームは作者自身もその魅力を過小評価していてあまり宣伝をしていないケースがけっこう多い。玉石混淆のなかでそれを見つけるのが私の同人ゲームライフの楽しみのひとつである。

これらのキラ星のごとき天才的着眼点のゲーム群「コロンブスの卵ゲーム」の中に、この度、初の海外作品がノミネートされることになる……それがこの『ザ・マインド』である!

世に「空気読みゲー」「顔色伺いゲー」は数あれど、ここまで空気を読むことだけに特化したゲームはあっただろうか。いや無い!そう断言したくなるほどシンプルな空気読みゲーオブ空気読みゲー。1~100の数字カードを全員に配って皆で空気読んで数字順に出す。 簡単にいうとただそれだけのゲームだ。
おいおいなにそれ、それでゲームになるんかよ?と半信半疑でプレイした10秒後に訪れる、目から鱗タイム。なにこれ……めちゃめちゃ面白い……
いや実際はなにが面白いのかと聞かれると言葉にしにくいんだけど。だからこのゲームの面白さがわからないとか嫌いという人がいるのもすごいわかる。ルールの最後に書いてある攻略法? みたいな方法もすぐ思いついた。それを使うか使わないかみたいな議論もあるようだけどそれは正直どうでもいい。
自分でも考えられそうなこんなシンプルなルールで、ここまで面白いゲームが成立するんだということに感動した。
だからなんと言われようが私の中ではこのゲームは最高評価なのです。

個人的にこの「コロンブスの卵ゲーム」は国産同人ゲームのお家芸だと思っているので、なぜこのゲームが日本発ではなかったのか、それがただただ悔しい。こんな国産同人力(ちから)を持った男が海外にいるとは……世の中は広いぜ。

ザ・マインド
マスクドSG

プロフィール
謎の国産同人仮面。袋ゲーを詰め込んだパンドラの箱が増えすぎて、押し入れという名の天岩戸から溢れ出そうとしている。その瘴気に当てられたのか、はたまた脳の経年劣化なのか、最近は特殊能力などの把握が覚束なくなり、ますますエンジョイ勢に近づきつつある日々。インスト5分以内のゲームをお待ちしております。
好きな漫画家は笠辺哲。最近のお気に入りゲームは『トマトマト』(BGLAB版)。

レビュアー紹介
ゴミの中に宝がある! の勝新イズムで同人ゲームと呼ばれるものならなんでもかんでも遊んでみる性分。遊ぶ気がまったくおきないプロト版から『惨劇ルーパー』を発掘するなど目利きとしての功績は大きいはず、なのだが、同人ゲームファンやデザイナーから軒並み距離を置かれているのは驚異的な人徳のなさと、ブローカー気質が原因か。ゲームは粗ければ粗いほどいいが信条。