第2回 おもちゃライター DJ・モチヅキ
プロフィール
フリーライター。ゲームはじめトイホビー全般をウロウロ遊ぶ。おもちゃショーの取材・見物も毎年恒例。怪しいアジア系出展者が減ってさびしいよ!
「80年代にヒットした『おばけ屋敷ゲーム』のリメイクです」
――スマホを使うんですか。
「イベントやバトルの演出が豪華になります。なくても遊べますよ」
「絶版になっていた『CLUEDO』の新版です」
――どこが変わったんですか?
「移動が短縮されたのと、『?』のマスで使うカードが加わってます」
「ドラクエのスライムレースを復刻させます」
――懐かしいですねー。
「そう思っていただける方に、家族で遊んでいただきたいですね」
どれも元は20年以上前のゲームなので、
面白いものは時代を問わない……というか、
ブームと言われているはずなのに新しいアイデアが出てこないなんて、
日本のボドゲ界はどこかでフラグを立て損ねているのかもしれない。
今回の舞台は、東京おもちゃショー2012。
国内外から144社が参加し、出展アイテム数は3万5000点にもなる。
今年の下半期から年末商戦のおもちゃ商戦に投入される、
最新のおもちゃが集まるイベントだ。4日間の来場者数は15万9678人となった。
去年はおもちゃ業界だけでなく「節電」「絆」のキーワードが喧伝され、
アナログゲームの話題が大手メディアでニュースになったことも一度や二度じゃない。
「さぞかし、ボドゲの出展も増えたのではないか……?」
「ついにボドゲブーム来る! いやもう来てる?」
という、ボドゲマニアの荒い鼻息を(勝手に)背に受けて、
会場を巡ったものの、「おっ」と思うものはリメイクだった。
もちろん新作も出展されていて、
「桃太郎電鉄ボードゲーム」や、「ポケモン」の作中に出てくる施設「ポケモンジム」での戦いテーマにしたもの、テレビのバラエティ番組「TORE!」のボードゲームなど、
人気コンテンツからのゲーム化も強い。
去年だと「逃走中」やアニメ「トリコ」のボードゲームが、この"枠"に相当する。
新規性があるものでいくと、ウィズが「囚われた友人」という
ミステリものを出展していたが、これは発売未定だという。
スマホ連動のトレンドにも乗っているので、
おもちゃショー会場での反応や、関係各社との事情を踏まえて検討中なんだろう。
別方面での動きをみると、
累計50万部に達した「どうぶつしょうぎ」のヒットを受けて
「アンパンマンはじめてしょうぎ」(セガトイズ)、
「おふろDEはさみしょうぎ」(パイロットインキ)、
「どうぶつしょうぎ5×6(仮)」(幻冬舎エデュケーション)という、見事な広がりが生まれている。
将棋ブランドというか、ねこまどブランドの安定感……!
SAPIX小学部がエコを学べるカードゲームを出展してたらしいし、(見逃しました)
大人が安心の"知育"は流通向けにも安心のキーワードだ。
駒かな事例で全体を察することは難しい。
だが、薄々でもなくわかっていたように、
このサイトを見に来ているようなボドゲファンがイメージする
"ボドゲのブーム"は残念ながら来ていない。
そういえば、あの「バトルブレイク」の出展スペースもなくなっていた。
"お休み"ということなので、雑誌の休刊のような状態なのだろうか。
去年騒がれた"ブーム"に実体がなかったのかといえば、そうでもない。
そもそもおもちゃ業界の市場規模で「ゲーム」は約2%。(133億円)これには「野球盤」や「人生ゲーム」、「オセロ」、「将棋」のほかに、「スーパーマリオ」の迷路ゲームとかパーティグッズも含まれる。
それでも「ジグソーパズル」単独(156億円)よりも一回りほど小さい。
ただ「ゲーム」は前年比で111.9%の伸びになっていたので、
ブームの根拠は確かだし、今年の"ゲーム系玩具"全体の弾みになっている。
問題は数だ。
リメイクの「CLUEDO」でも、年間で3万個の販売を目標とするという。
これは「ドミニオン」日本語版の基本セットが、3年かけてもうすぐたどり着こうとする数に匹敵する。
「スーパーマリオ」の迷路ゲームは隠れたヒット商品で、年間7~8万個は出るそうだ。
ちなみにこちらは「ドミニオン」日本語版の全拡張を含めた累計販売数とほぼ同じ数字。
「人生ゲーム」に至ってはシリーズ全体で年間20万個。
マニア向けの、いわゆる"ボドゲ"が多少流行ったところで、
おもちゃ業界全体へのインパクトはまだまだ小さい。
ちなみに、
「カードゲーム、トレーディングカードゲーム」は約15%。(1028億円)、ベイブレードや爆丸を含む「男児キャラクター」は約8%(523億円)。
日本のゲーム系玩具作りのパワーはこっちに集中しているんだろうと思われる。
(参考:社団法人日本玩具協会)
念のため断っておくと、売れてるとか数が出てることが価値のすべてではない。
単純に認知と流通の違いが大きいな、という話。
去年も出展していたアークライトが、今年はホビージャパンと合同のブースで出展していたから、
両社の扱うタイトルの流通拡大を願うばかりだ。
日本のボドゲ元年、いまだ遠し。
マニア向けの市場は今が天井としても、
「ゲーム」ジャンル全体の伸びが、
知育やファミリー向けのパッケージングと融合して、
新しい遊びを普及させる下地となるかもしれない。
アガツマの「アンパンマン天才脳カード」なんて、
名前こそ知育らしいが、動画を参照すると、
ドイツゲームを知るひとにはちょっと既視感がある……?
最後にキッズにウケること確実のコイツを紹介して、
日本ボドゲ界(どこなんだそこは)の発展を祈ろう。
犬にエサを与えてプープーおならをさせながら散歩すると、ウン●が出る、「ブリッとでるワン」というゲーム。
ボドゲファンの聖地、ドイツからやってきた精鋭だ。
モチヅキ氏、いやモチヅキ(あえてこう呼ばせていただく)は第1回の高得点で得た名声に酔い、財に溺れ、なにかを忘れてしまったようだ。今回は終始「ゲームの話」ばかり。肝心の「ゲーム以外の話」が抜けてしまっている。彼が「人生ゲームはゲームじゃないから!」という最悪な思想の持ち主でないことを祈りたい。
モチヅキ氏は今回1000化学を獲得。しかしペナルティにより9000化学の減点。合計950化学となった。