序章
親愛なるボドゲフリーク諸氏へ
コンニチワ。
私は都立次元図書館の館長、朴洲吾太郎と申す者です。
本日は皆さんにご報告しなければならないことがあり、急遽このような場をお借りすることになりました。突然のご挨拶となりましたことを、どうかご容赦ください。
事情が事情ですので、先を急がせてもらいましょう。
私は自身の生涯をかけてボードゲームのボックスアートを研究してきました。そしてその過程で、ある重大な事象がボドゲ箱に発生している事に気が付きました。あまりに長い間使用されずに積まれていたボドゲに、それは人知れず起きていたのです。
私が最初に気付いたのはライナー・クニツィア氏の「サムライ」に起きた異変でした。
皆さんご存知の通り、「サムライ」のボックスアートを飾るのは立派な兜を付けた鎧武者です。しかし其処に居るべき鎧武者は姿を消し、代わりにクドイ顔のペテン師が鎮座していたのです。私はすぐに、それが「サムライ」の直上に積まれている「ババンク」の中年紳士であることに気が付きました。
そうです。
あまりに重く長く積まれ続けたことにより、ボックスとボックスの間に時空の歪みが生じ、全てのボックスアートの次元が繋がってしまったのです。
・・・・・
私は無意識のうちに、鎧武者が抹殺されたことを理解しました。
ボックスに触れると、イカズチに撃たれたような衝撃と共に、戦士たちの熾烈な戦いの記憶が明確なイメージを伴って脳に逆流するのを感じました。
― 聖戦 ―
そう、それはまさに聖戦というべき戦いでした。
・・・・・
どうか落ち着いてください。
皆さんのボドゲに今すぐ大きな変化があるというわけではありません。ただ、それが訪れるときのために、私が研究の間に見てきたことを、正確に伝えておかなければならないと考えました。
これから発表する百篇を超える・・・ハ・・(以下ノイズが続く)
2012年5月13日
都立次元図書館 館長室に残された、幾本かのカセットテープより再編集
館長朴洲吾太郎は現在も行方不明のままである