第3回ゲストはドイツゲーム界最強のボードゲームデザイナー・ライナー・クニツィア博士が登場!メビウスゲームズ20周年記念パーティー出席のため来日中の博士に、クニツィア○号やドミニオンについてなど、あれこれズバッと聞いてみた。ゲームスーパースター列伝

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『砂漠を越えて』がそういうゲームの原型だと思っているよ。

――今回、日本に来たことで、なにかいいアイデアは生まれましたか?

クニツィア まだ今のところなにもないね。私はなにかを見た瞬間にひらめくことは少ないんだ。だから自分の家に帰ってから、日本に関係したゲームを思いつくことはあるかもしれないね。

――日本のファンは"あちらを立てればこちらが立たず"っていう場面に直面するあなたのゲームデザインを説明するときに"クニツィア・ジレンマ"という言葉をよく使うのですが、ご存じですか?

クニツィア 知らないですね。今、初めて聞いたよ。

――やはりそういったデザインはもちろん意識して作っているわけですよね。

クニツィア そうだね。ではそれについてオーソドックスな答えで説明しよう。人生は素
晴らしい。すごいことが起こるし、いろんな出会いがある。今も私は日本であなたと話し
ているでしょ。そしてゲームにもいろんな選択肢がある。まあ人生ほどではないけどね。

――なんか壮大な話になってきましたね。

クニツィア でもできれば人生くらい多くの選択肢がゲームにもあってほしいと私は思
ってる。逆に聞きたい、選択肢があまりないゲームをなぜやる必要があるんだい?  私はたくさんの選択肢があるゲームのほうが好きだし、選択肢のないゲームはあまり好きではない。だから私が作るゲームはおのずと選択肢に悩まされるゲームになるんだと思う。

――なるほど。ではあなたのゲームのなかで、これぞ"クニツィア・ジレンマ"っていうゲームを1つ上げるとしたら?

クニツィア うーん、そうだね、『砂漠を越えて』がそういうゲームの原型だと思っているよ。

――あと日本のファンのあいだでもう1つ言われてることがあるんですけど・・・。あなたがあまりにも多作なので、本当はあなたのクローンが何人もいるんじゃないかっていう噂があるんです。たとえば1人目のクニツィアさんはゲーマーズゲームを作ってて、2人目は子ども向けゲーム。3人目はダイスゲームって感じで何人ものあなたがそれぞれの担当するゲームを作ってるんじゃないかっていうね。その話は聞いたことがありますか?

クニツィア ああ知ってるよ(笑)。

――では、あなたは何番目のクニツィアですか?

クニツィア フフフ、この瞬間は1番目だね(笑)。

――あはは、答えてくれてありがとうございます。これまでに500以上のゲームを作られたわけですが1つのゲームの制作にどれくらい時間をかけるものなんですか?

クニツィア ゲームによってさまざまだね。あっさりできるものもあるし、いろんなとこ
ろへ寄り道してなかなかルールが完成しないこともある。『Ra』や『モダンアート』な
んかは後者のパターンだね。

ライナー・クニツィア博士

――これまで特に制作に時間がかかったゲームはなんですか?

クニツィア 『モダンアート』はもともと1ラウンドだったんだ。だけどハンスイムグリックの助けによって現在の形になった。カード数も増えて4ラウンドの形にね。

――完成するまでトータルでどれくらい時間がかかってるんですか?

クニツィア 4、5年間くらいかな。

――4、5年!

クニツィア いや、もちろんずっと作ってたわけじゃないけどね。寝かしてる期間ももちろんあったし、そういう時間も含めたらそれぐらいかかったってことだよ。

――では、いちばん短くできたゲームは?

クニツィア 『なかま集め』っていうゲームかな。

――サルが出てくる子ども向けゲームですね。

なかま集め

クニツィア そうそう。あれは短かった。トータルで2週間だね。

――はやっ!

クニツィア  1日で思いついて、メカニクスも簡単だしすぐに試作を持って幼稚園で試すまでが1週間。フィードバックをとって、全部やって2週間ってところかな。

――じゃあ、大人向けのゲームで早かったのは?

クニツィア 大人向けのゲームはどうしても時間がかかる。とても短くても3、4週間で終わることはない。しばらく寝かせてから遊んでみることが大事だし、さらにテストプレーの期間もあるからね。あといくつものゲームを同時に制作をしていることもあって、どうしても時間がかかってしまうんだ。

――同時に何個ぐらいのゲームを作っているんですか?

クニツィア 昔は90の引き出しがあった。

――えっ、それはあなたの頭のなかにってことですか?

クニツィア いや、実際にオフィスに90の引き出しがあって、そこに1つずつゲームのデータが入っていたんだ。でも今は60個に減らしたよ。一度に90個はちょっと無理だったね。

――60でも多いですよ!  ところで10年ぶりにあなたが、ゲーマーズゲームを手がけているという噂を耳にしたのですが、それは『アグリコラ』とか最近のゲームに近いものなのですか。それともあなたの過去のゲーマーズゲーム『タージマハル』や『アメン・ラー』に近い感じなんですか?

クニツィア ゲーム内容は、それぞれのプレイヤーが国を持ってそれを80年かけて発展させていくんだ。10年が1フェイズだから8フェイズだね。うまく発展させた人が勝者となる。

――えっ、そこまで具体的に話せるってことは、もうほとんどできてるってことですか?

クニツィア もちろん。2つのゲームレベルを考えていて難しいレベルでプレイする場合、失敗すると国がなくなってしまうプレイヤーが出る。1つのことをやると別のことが悪くなるバランスをとっていかなければならないんだ。日本人の好きな"クニツィア・ジレンマ"がいっぱい詰まっていると思うよ。

――じゃあ、あなたの作品らしいゲームってことですね。

クニツィア そうだね。ゲームはすでに完成していて今は出版社を探してる段階だよ。

――ひゃー、それは楽しみです!

通訳 けがわさん

次回 
やりすぎ企画・クニツィア博士に『ボードゲーマーに100の質問』をぶつけてみた! に続く