第四回ゲストは世界最大のボードゲームデータベース、ボードゲーム・ギークboardgamegeek.com(BGG)を運営するスーパースター、エリック・マーティンが来日!ということでゲームマーケット2015(春!)で話を聞いた。ボードゲームスーパースター列伝

日本のゲームはカテゴリー分けできない。新しい見方をしなきゃいけないんだ。

――日本に来たのは初めてですか?

エリック 東京ははじめてだね。以前沖縄には来たことがあって、そのときに乗り換えで空港にはいたんだけどね。今回、やっと来れたよ。

――初めてのゲームマーケットはどうでした?

エリック 米国でも、こういうイベントがあったらいいなって思ったね。

――米国では、このようなイベントはないんですか?

エリック ないよね。でも少し近いものならある。まだ出版されてないタイトルを遊べるアンパブリッシュ、通称アンパブっていうイベントがあるんだ。そこではこれから発売される予定のタイトルをみんなが持ち寄ってお互いにプレイする。

――それは発売することを前提にして?

エリック そうだね。みんなで遊んでみて意見を出し合うんだ。そもそも米国ではマイナーパブリッシャーっていうのがほとんどない。それが日本との大きな違いだと思う。でも最近は変わりつつあるけどね。クラウドファンディングで、まず、お金を集めてから出版するやり方が主流になってきているからね。

――米国では、日本の同人デザイナーのような活動をしてる人は少ないんですか?

エリック ほとんどいないね。でもたとえば「Kigi」を作ったダニエル・ソリスがやっていることは近いかもしれない。

――日本ではゲームフィールドから発売されたゲームですね。

エリック 彼は近所に住んでるんだ。私の家から10分ぐらいの場所に住んでて、よく知ってる。彼のスタイルは日本の同人にとても近いんだけど、最後のパブリッシュの部分はプリントオーダーでやってる。だから厳密には違うよね。あとはやっぱりキックスターターが主流だね。米国は広すぎるから全米に売るとするとその手段が的確なのかもしれないね。あっ、そういえば、アラン・ムーンなんかが作ってるプリント&プレイゲーム。あれが米国式の同人かもしれないね。チーパスのジェームスなんかもそうだよね。

――エリックは、日本の同人ゲームをどのように見ていますか?

エリック 日本のゲームはとにかくアートワークがすばらしいよね。ゲームデザイナーやパブリッシャーによってグラフィックにも個性がある。米国のゲームはグラフィックがあまりよくない。ありふれたものが多いくて個性がないんだよね。

――今回、気になったゲームはありました?

エリック 賽苑のゲームをたくさん遊んだよ。「勝手にしやがれ」とか「マングローブ」とか。どれもとても個性的だったね。米国のゲーム、ドイツゲーム、最近だとフランスゲームもそうだけど、その3つはなんだかんだ言ってもやはり似ているんだ。どのゲームも、これはワーカープレイスメント、あれはデッキビルドってカテゴリー分けできる。だけど日本のゲームに関してはそれがなんだかよくわからない。どこにも入らないから、新しい見方で見なきゃいけないんだ。

――今回、日本に来たように他の国のイベントにも行ってるの?

エリック いや、米国とドイツ、そして今回の日本で3つめだね。シュピール、ジェンコン、BGGコンいろいろ行ってるけど、フランスにコンっていうのがあるらしくて、それはジェンコンと同じくらい大きいって聞いてる。一度は行ってみたいね。

――最近、フランスではファミリーゲームのブームがあって、若者や女性のファンが一気に増えたといわれてるけど、米国はどうなの?

エリック 女性の比率は25%ぐらいかな。そういえば、日本では女性のゲームデザイナーってあまりいないのかな?

――どうだろ、数人はいるのかな。どうぶつ将棋の北尾まどかさんが有名ですね。

エリック 米国では、家庭で遊ばれてるメインストリームのゲームは女性デザイナーのものが多いんだ。ゲーム大賞を取った「クワークル」のスーザン・ロスとか、あと「ジェンガ」のレスリー・スコットもそうだし、米国では定番の知育パズルゲームの「コンティニュオ」のデザイナーも女性だよね。

――そうなんだ! ところで、今日はゲーム何個買ったの?

エリック スーツケースがいっぱいになるほどは買ったよね。もらったものもあるけど。

――買ったゲームは遊んでるんですか?

エリック とりあえず写真を撮って、遊ぶのは・・・・・・いつになるかわからないな。たとえば、去年の秋にも日本のゲーマーに頼んで同人ゲームを送ってもらってたんだ。そのなかで遊んでみたゲームは、じつは、まだない(笑)。まだ、どれも遊べてないんだ。

――カナイセイジさんの「ラブレター」が米国のAMAZONでレビューで700以上の評価が付いていたりとか、日本人作家のゲームが、向こうでも受けている印象はあるんですが、ゲーマーたちはどのような反応を見せてますか?

エリック 米国でもマーケットはたくさんあるからね。全部のゲーマーに受けることはない。でも、たとえば「チケット・トゥ・ライド」を遊んでる人や「マンチキン」を遊んでる人は、BGGに来ないギークだ。とにかくボードゲームのギークっていうのは、いろんなタイプがいるからね。

――結構遊んでるのは見かけたりするんですか?

エリック それはあるね。たとえば「ギャザリング・オブ・フレンド」っていうチケットトウライドのデザイナー・アラン・ムーンが主宰してるイベントがあるんだけど、そこでも日本のゲームが結構遊ばれてたよ。

――近しい人たちとホテルに集まって10日間ゲームを遊びまくるっていうイベントですよね。

エリック そう、最近は出版社の人たちが来るようになってきてるんだけど、そこでオインクゲームズの「海底探検」のミニチュアを作って持って来ている熱心なファンがいたよ。あと「惨劇RoopeR」を遊んでる人たちも見た。やっぱり日本のゲームは個性がはっきりしてるからウケてるんだと思うよ。カナイセイジにしてもBakaFire Partyにしてもね。

――で、今回エリックがゲームマーケットに来た目的はなんなんですか?

エリック BGGのマーケットではゲームのプロモカードや、たまたま目に止まったゲーム、たとえば「51番目の州」やなんかを販売してきた。BGGのユーザーたちはマーケットを利用することがわかった。だから商品を増やしたいんだ。日本のゲームは、毎年ヤポンブランドがエッセンシュピールで日本人作家のゲームを売ってるけど、すぐに売り切れてしまうんだよね。世界中に日本人作家のゲームを欲しい人がいる。だから同人のパブリッシャーにギークを通していつでも買えるようにしたいんだ。その話をしに来たんだよ。日本のゲームをBGGストアを通して販売しようと思うんだ。で、フライヤーをすってゲームマーケット春で、配ってたんだけど、ちょっと想像してたより時間がかかっちゃって、あまりブースを回れなかったんだ。コレ、のっけといてよ。

フライヤー

そんなエリックは再び来日し、2015年秋のゲームマーケットにも参戦! ゲームを作ってる人たちはエリックを見つけてゲームを見せれば、世界進出できるかも!

終わり