キックアウト・ザ・ゲーム・マザーファッカー緊急座談会

ゲームマーケット2013春を振り返る
秋到来!  イカレたゲーム野郎どもが座談会を開催。春のこととか500円のアレとか人狼のソレとか、2013年をまとめて振り返る!
マスク・ド・S.G

マスク・ド・S.G
同人ゲームハンター。同人ゲームが好き過ぎて、少しおかしくなっちゃったこともあったけど、今はもう大丈夫だよ。最近はジップロック詰めの袋系ゲームを夜な夜な開封して中の空気をたっぷり吸引するのが日課に。

ゲーム・カワカミ

ゲーム・カワカミ
フリーライター。アンドールの伝説の面白さがよくわかんないのは、伝説6をまだプレイしてないからだな、きっと。好きなゲームはフルーツニンジャカードゲーム。

マッド・ドッグ・タメラ

マッド・ドッグ・タメラ
ルール超訳家。同人だろうがドメジャーだろうがカッコイイものはなんてカッコイイんだろう主義者。アートワークにとことんこだわるイラスト乞食。今年のベストはもちろんエピックスペルウォーズでやんす!

マスク・ド・コーエンジ

マスク・ド・コーエンジ
見た目はこわいが、じつはいい超人。第1回世界の七不思議日本選手権王者というゲーム強すぎマンでもある。

ゲームマーケット2013春を振り返る#2
「500円ゲームズの向こう側」

ゲームマーケット2013春を振り返る

前回のお話はこちら

じゃあ、そろそろ買って面白かったゲームを見せてよ。
まず『ダンジョンオブマンダム』だよね。
ダンジョンオブマンダム
それ、道で売ってたんだっけ? お兄さん、いいのあるよって耳打ちしてくるやつだろ。
いや、それは賽苑の人だね。『ダンジョンオブマンダム』は、知り合いが売り終わったブースで午後から間借りして売ってた。
Twitterで「売ります」って言ってね。
500円のゲームは他にも面白いゲームがあったの?
これと『セイルトゥインディア』が話題になってたよね。
あっちは熊本のゲーム屋から発売されたんだよね。
あれが発表された日はもう、Twitterが、その話題で持ちきりだったよな。俺も喉から手が出るくらい欲しい!ってなった。
喉から手が出るぐらい(笑)。
喉から手が出るぐらいっていいよね。つうかそんなに話題になってねえだろ。SGのまわりの2、3人がつぶやいてただけで。
おまえの世間はどんだけせまいんだっていうね。まあ、その話はちょっと置いといて、500円ゲームズって結構出てたんだっけ。
500円ゲームズって企画のブースがあってそこで企画参加作品の紹介がされてたんだよね。
30タイトルくらいあったんじゃないかな。そこで調べて、サークルに買いに行くって感じで。でも企画に参加しなくても500円で売ってたところもあったしね。『ダンジョンオブマンダム』も、そっちだと思う。
500円っていうのは安いよね。
単純に安いし、つまんなくても腹立たない値段だよな。
これは前回話してた「コンポーネントをちゃんとするブーム」が終わりつつあるってことなのかな?
たしかに面白さは値段じゃないっていうイメージが今回500円ゲームスで強調された気はしたよね。コンポーネントに力を入れなくても面白いものは面白いっていう。
俺はSGと違って見た目は重要だけどね。
SGは特殊中の特殊だからね。でも、みんな500円で出してみて欲しいよね。まずは、そっからスタートするっていう。
そうしたら事故みたいなゲームって減る気がするよね。
1、2回遊べばわかるようなミスが残ったまま売られてるゲームとかあるもんな。ああいうのって、テストプレイしてないのかな? 
やってるんだけど作ってるのがジャイアンみたいなやつで、テストプレイした人もなんも言えないのかもよ。
たとえばバッティングゲームとチキンレースゲームってシステム自体が面白いから、そんなつまんなくはならないんだけど、それはゲームを作ったとは言わないんじゃないかってものが多い気がする。最近だと人狼なんかもそういうの多いみたいだけど。
たまに奇跡のようなつまらなさのもあるけどな。一時期、アホみたいに出たバッティングゲームは特にダメなのが多い気がする。
たしかによくこれを売ろうと思ったな!っていうのが結構あったよね。そんでそういうのが完売になってたりとか。
すでにクソゲーとかいう次元を通り越して、魔物に取り憑かれた人が作ったようなゲームが結構あったよね。
逆にそこまで吹っ切れてると俺はたまらない魅力を感じるんだけどね。
結局、1500円の小箱のゲームっていっぱい売られてるんだけど、じつはあのサイズのゲームを同人で作るのは難しいんだよな。
それは印刷代の話?
いや、ゲームのクオリティとしてね。アミーゴのカードゲームって、100枚とか80枚のカードを使ったゲームでも、こうしようっていうアイデアが最初にあって、それをゲームとして成り立たせるために、さらにそこからもっかい練り込むっていう作業が必要なんだよね。
ひと工夫ね。
へたしたら2つ、3つ工夫してる。それを同人ゲームの規模でやるのってすごくたいへんなことで。
でもドイツの市販ゲームとしては小さいサイズだよな。アミーゴの小箱って。
そういうレベルでもゲームをデベロップする人たちがちゃんといて調整してる。
ようは1500円ほどするゲームだと、ルールを作ってから何時間もいろんな人に遊んでもらって、ルールを調整して、さらにそれを数回繰り返すっていう作業が必要ってことか。
日本の同人ゲームはそれをちゃんとやってないのが多いんだよね。
というか、ほとんどがそこまでやってないんじゃないかな。
そこをおろそかになるとゲームはどうしても粗が目立ってしまうんだよな。
千円から2千円くらいの見た目だけちゃんとしてるダメなゲームがあふれてるのは、それが原因だな。
まあそれを言い出すと、国産の大手玩具メーカーから出てるゲームなんかも、そこまでやってるものなんてほとんどないんだろうけどね。ゲームマーケットではドイツゲームを知ってる人たちが集まるから、そこと比べられちゃう。
見た目がいいし、値段がドイツのカードゲームと同じぐらいするから「ダメ」のジャッジのハードルが上がるんだろうね。
印刷所の納期に間に合わせるために、結構無理やり作ってるとこもあったりするんだろうし。
そこが500円ゲームズだと予算の問題で入れられるカードや駒の数がかぎられる。それが、同人の人が思いついたアイデア1個だけで完結させるのにちょうどいい範囲なんだよね。
たしかにそう言われると500円ゲームズはワンアイデアでできてるものが多いよね。
印刷もこのサイズの判で何枚カードをするといくらで何枚刷れるって計算してやってるから、1つのゲームに16枚とか32枚しかカードが入んないんだよね。
そのサイズがちょうど今のゲームマーケットの半年に1回なんかゲームを出すっていうスパンにも合ってるんだろうな。
だって半年に1作で完成版出すなんて海外のデザイナーでもそんな人まれだしね。
そう考えると無理があるんだよね。
趣味で個人がさける時間のなかで、作りやすい規模なのが500円ゲームズってことか。
まあ、一概には言えないけどね。
で、コンポーネントが少ないから、プレイ時間が短くてすぐ終わるものが多い。
そうすると遊ぶ機会が多くなるよな。
たしかに10分程度で遊べたら、ルールに多少面白そうなところがあれば、すぐやってみようってなるもんな。
遊ぶ機会が増えると、はやってるように見えるっていうか、まあ、それだけ遊ばれてるっていうのは、本当にはやってるとも言えるんだろうし。とにかくバズりやすくなるってことが大きい。
みんなが遊んでるように見えるっていうのは重要だもんね。
そんでSGみたいなのが、それを見て「のどから出るほど欲しい!」ってなると。
うるせえ!
つまり500円ゲームはアイデアをそのまま形にしたものが多いってことか。
だけどシンプルが故に飽きるのが早いゲームはありそうだよな。
まあ、そこはしかたないよね。
ゲームになにを求めてるかによるんだろうけど、俺はルールがおもしろいとか、そのシステムでどういうふうにゲームが動くのかっていう部分に興味があるから、別に1個のゲームを10回とか100回とか遊べる面白さっていうのはそんなに求めてないし。
まあ、遊んでも疲れないものがいっぱいあるのはいいよね。
そこはいいなって思うけど、そうやって単価の安いものばっかりが目立って、そればっかりが売れてるようなノリになると、それはそれで高いボードゲームが作れなくなるんで、めんどくさい感じがするけどね。
たしかにこうして500円で面白いゲームが出ると高いゲームは作りにくいよね。
余計にハードルが上がるよな。
でも別にみんなが500円ゲームズばっかり買ってるわけじゃないしね。
そんなのばっかり求めてるわけじゃないよっていうね。
バズることが多いだけで。
まあ、でもそれをそのまま受けいれちゃうやつって多いでしょ。さっきのSGみたいに。
俺がフォローしてる人が世界のすべてみたいな人はボードゲーム関係の人は特に多いからね。SGみたいに。
いちいち例に出すなって。でも値段が面白さに比例しないのはわかってても、金を払ったほうからすると、どうしてもそれなりの期待はするわけで。
ただ500円だから売れてるし、安いしルールも単純なのが売れるって話になってくると、本当に複雑なゲームを作れる人が、複雑なものを作りにくくなると思うんだよね。それはイヤだなって。
そういやさっきSGが言ってた話なんだけど、『セイルトゥインディア』をゲームフィールドってゲームショップが製品として出したんだよな。
価格が3千円になってたんだけど、そんでそれが高くなるとは何事か!って言ってる人がいたりするんだよな。だいたい500円っていうのが人件費とか無視した価格だから。
まあ、ちゃんと製品になって出るっていうのはうれしいけど、元が500円だったから高くなった気はするよな。
500円っていうのは、カードをチェックしたり、分けたり、袋に詰めたりってことを自分らでやらないとできない価格だからね。しかも箱もないから、袋に詰められてるし、流通させるには無理な仕様なんだよね。
最初が特売ワゴンセールみたいなものだったから、それが当たり前になってるっていうね。
お祭りのイベントみたいな感じで、好意でやってるようなことが、さも当然みたいな言い方をしてる人がいっぱいいてさ。500円のほうがよかったってのを、言い出したら、面白いゲームが流通に乗せるってことを怒ってるってことだからさ。
まあ、安いに超したことはないんだけどね。
趣味で、誰かがめちゃめちゃ時間割いてるからできる値段なんだよな。
じゃあ、もうわかった。1000円ゲームズをSGがはじめろよ。内容はワンアイデアでいいし、残りの500円で経費をまかなえばいいんじゃねえの。
キャッチコピーは「のどから手が出るほど欲しい!」で。
やだよ!

#3へつづきます